膀胱脱・子宮脱・尿失禁の手術治療について
藤森病院では膀胱脱・子宮脱・尿失禁の手術治療に力点をおき取り組んでいます。年間80例程度行っている経腟メッシュ手術の術式を説明します。メッシュを埋め込む部位は腟前壁(A)と腟後壁(P)に分かれます(図1)。
図1
メッシュは本体とアームとに区分され, 図2aがアームを左右で2本とする形状を青線で示し, 図2bはアームを左右で4本とする形状を黒線で示しています。 膀胱脱・子宮脱ではAに, 直腸瘤ではPにメッシュの本体を埋め込みます。Aの場合にはアームを左右で2本あるいは4本とすることがあります。Pの場合にはアームを左右で2本となります。アームを体表に導くための穿刺ルートは3種類-Ⅰ(経閉鎖孔から恥骨付着部付近への経路), Ⅱ(経閉鎖孔から坐骨棘近傍への経路), Ⅲ(坐骨直腸窩から仙棘靭帯への経路) -に分類されます。
図3はⅠ,Ⅱ,Ⅲの穿刺部位です。A -Ⅲ法はアップホールド法と呼ばれていてAにアームを左右で2本としたメッシュを埋め込み, 穿刺経路をⅢとする術式で,現在もっとも繁用されています。
図3
A-ⅠⅢ法はエレベート法と呼ばれていてAにアームを左右で4本としたメッシュを埋め込み, 穿刺経路をⅠ,Ⅲとする術式です。 A-ⅠⅡ法は10数年前に経膣メッシュ手術が提唱された時点で原法となった術式であり, Aにアームを左右で4本としたメッシュを埋め込み, 穿刺経路がⅠ,Ⅱです(図4)。 A -Ⅱ法はAにアームを左右で2本としたメッシュを埋め込み, 穿刺経路をⅡとする術式です。P-Ⅲ法はPにアームを左右で2本としたメッシュを埋め込み, 穿刺経路をⅢとする術式で直腸瘤に行われます。
図4
年間10例程度行っている腹圧性尿失禁に対する経閉鎖孔テープ(TOT)手術 (図5) の術式を説明します。外尿道口から1cm近位側の部位に長さ3cmの横切開をおき穿刺経路を確保します。
図5
次にキット製品 (図6) に組み込まれている穿刺針を経閉鎖孔の上方内側部から刺入し指先をガイドにして骨盤底外に針先を進めます。続いてテープ状のメッシュを穿刺経路内に尿道後壁に過剰なテンションがかからないように確認しながら設置し, 手術創を閉鎖します。載石位でせき負荷により尿が線をなして漏れる重症例に対しても優れた治療効果を示す手術法です。
図6
膀胱脱・子宮脱・尿失禁などで悩んでいる場合にはためらわずに当院に受診することをお勧めします。
文責 西澤 理